「頑張ったんだな。あの頃から筋はよかったが、まさか黒崎病院とはなあ」

「藤宮先輩が手取り足取り教えてくださったからですよ」

「立花は教えがいのある後輩だったからなー」

藤宮にはいろいろとかわいがってもらった認識がある

実家を離れて暮らすしるふにとって、兄由斗のような存在だった

「でもまだまだですよ、私なんて」

ふと自分の前を歩く逞しい背中が思い出されて、しるふは瞳を細める

あの背中は、しるふが少し近づくたびに少し離れていく

そうやってずっとずっとしるふの前を行く

でも、決して見失うことがないから、見失いそうで途方に暮れていると優しく手を差し伸べてくれるから

だからどんなに近づけなくても、彼が少し前までいた場所に立ちたいと思うんだ

「本当変わらないなー。そのまっすぐで一生懸命なところ」

「藤宮先輩も穏やかーな感じは変わりませんよ、それよかますます拍車がかかってますね」

病院でももてもてですか?」

「まさか、これでも結構いい年だし、忙しい医者なんて誰も相手にしないよ」

「いや、それはー」

きっと藤宮先輩がそう思ってるだけですよ、そう言おうとしたら

「ったちばなせんせい!!」