年が明けて新年



「立花?」

「ん?」

黒崎病院に数ある会議室やホールの中でもっとも広い、皆が大ホールと呼ぶ場所で新年会が行われていた

といっても主催者は医院長ではないらしい

医院長の知り合いが場所を貸してくれと言ってきて、交換条件として黒崎病院従業員も参加可能にするということで貸し出したようだ

広々とした空間に並べられた料理の数々

専門のバーテンダーもいてリクエストに応じてカクテルを作ってくれるのだから病院経営者の金銭感覚とは恐ろしいものだ

もともとお酒は好きだけれど、一人でバーに行ったり、音のない部屋で何本も缶を空けるほどではないしるふは、海斗がドイツに行って以来確実にアルコール摂取が減ったと自負していた

でもせっかくの機会だし、別に禁酒してるわけじゃないし

と自家製ワインを口に含んで、あ、ブドウの味がするー、と思っていたら背後から声をかけられた

どこか記憶をくすぐる声のような気がする

「……藤宮先輩?」

記憶を手繰っていたしるふは、大学時代までさかのぼって顔が一致したその人の名を呼んだ