今となってはいい思い出だが、きっと莉彩がいなかったら今の自分たちはない

お互いを想っているにもかかわらず、空回りばかりして結果別れていたような気がする

「ホントー、感謝してよー」

ま、しるふに付き合っていい酒も飲めたからいいんだけど

そう言いながらあっけらんかと笑う莉彩は、前よりも雰囲気が丸くなった

やっぱり親になると変わる物だろうか、と莉彩を見上げる

「て言っても、私がいなくてもなんだかんだで黒崎先生と落ち着いてたと思うけどね」

機嫌の直った長男を抱き直しながらしるふの隣に座る

「そう?別れてたら莉彩がいい男紹介してくれるって言ってたじゃない」

「まあねー、でも最終的に黒崎先生に戻ってたと思うよ」

あれだけしるふを理解して、想って、そばにいてくれる人はいないだろうから

「あ、そだ莉彩。今度式場とドレスの試着、付き合ってよ」

姉が予定合わなくてさ

「いいわよー。喜んで付き合ってあげようじゃない。なんならブライダルエステも付き合ってあげるわよー」

笑いあう二人を、莉彩の長男がきょとんとした瞳で見つめていた