「だってついて行ってどうなるのさ。私もドイツで研修する?そこまで英語得意じゃないし、それにいくら黒崎病院ERが基盤しっかりしてるって言ってもさ、急に古株二人も抜けたら医局長驚きだよ」

「じゃあ、なんでそんなに平気そうな顔してるのよ…」

はあ、とため息とともに額に手を当てる紗雪にしるふは一瞥を投げかける

「いちいち心配してたら身がもたないじゃん。一年だよ?まだ4月。海斗がドイツ行ってからまだ一か月もたってないじゃん」

ここで不安になってどうすんのよ

「知ってるよ?あんたが海斗君をすごーく信頼してるってことは。でもさ、それとこれとは別じゃない?不安にならない?海斗君今何してるんだろうとか、そこら辺の女に言い寄られてないかな?とか。それにさ、会いたくならないわけ」

「ひとまず海斗が浮気するとか有り得ない。それにドイツに行くときにせめてメールは返してね、って釘差したのを忠実に守ってるらしく、ちゃんとメールは帰ってくるよ」

すごくない?あの海斗がちゃんとメールするんだよ?いや、海斗の成長を感じたね

うんうんと満足そうに頷くしるふに紗雪は冷めたまなざしを送る

わからない

実の妹ながら理解できない

「確かに海斗君はしるふ一途なのはよーくわかってる。でもさ一年も超遠距離してたら新しい恋だってするかもしれないじゃない、海斗君に限らず。その状況下を自ら作り出す精神が私には理解できない」