あの時も、これからも

彼女、望月花蓮は、海斗に近寄ってくる社長令嬢や医院長の娘たちの中で唯一海斗を「海斗君」と呼ぶ女だ

黒崎病院とゆかりのある町医者(といってもかなり大きな個人病院だが)の一人娘だ

信次と花蓮の父親が何気に仲が良くて幼いころは遊んだ記憶もままある

花蓮の父親に関しては、海斗も好印象だ

気さくで、感じのいい紳士的な物腰の人だったと記憶している

花蓮も幼いころは、まあ、町医者の一人娘ということで少々わがままなところはあった気もするが、それでもお互いに変な思惑なく遊んでいた

が、母親の葬儀の際に再開した時には「面倒くさい女」になっていた

我がままに拍車がかかり、人懐こいのか、ただ単に八方美人なのか

良くも悪くもお嬢様

花蓮の父親も少し癖穎気味だったらしく、「ちょっとわがままに育ってしまってね」と苦笑しながら言っていた

その時隣に居た弘毅とともに「ちょっと!?」と心の中で毒づいたのは言うまでもない

高校を出て、花蓮が父親とともに海外の(確かアメリカあたり)大学に進学し、そのまま海外に居座るようになって連絡はおろか、若干存在すら忘れていた

だが、たぶん黒崎病院夫人の座をねらって(あるいは単純に海斗に好意をもって)言い寄ってくる女の中で一番警戒すべきは、この女なのだ