あの時も、これからも

「黒崎先生、受付から呼び出しかかってますよ」

しるふが帰国してしばらくして、いつものように講座を受けた後、一応席を置いているERで資料や担当している患者のカルテをチェックしていたら見慣れた看護師に声をかけられた

「呼び出し?」

まさかまたしるふが来るはずはないだろうと不審に思いながら、机の上を軽く片付けてから席を立つ

受付があるのは中央入口を入ったところで、ERがあるのは裏門から続く救急外来の入り口がある方なので、その距離は結構遠かったりする

しかも総合病院ともなるとたくさんの部署があり、ベット数も多いため、受付の方まで足を延ばすことはほとんどない

すたすたといつものように白衣のポケットに手を入れて、すれ違う人をよけながら中央入り口が見えるところまで来た海斗は、受付の少し横に佇む人影にうんざりと瞳を細めた

もし、心の叫びを言えるのなら、げ…、だ

その姿を認めた瞬間、回れ右をして医局に帰りたくなった

少しの理性で踏みとどまった自分は、偉いと思う

でも、そのわずかな理性は、これ以上歩を進めることまでは強制できず、海斗は軽く天井を仰ぐ

「海斗君!!!」

頑張れ、自分、とやけくそに心の中でつぶやいていざ出陣しようと視線を戻したら、海斗の姿を認めて満面の笑みを見せた望月花蓮(もちづきかれん)が、ぱたぱたと走り寄ってきた