あの時も、これからも

その背を見送った弘毅と亜紀の間に沈黙が流れる

「……海斗に先こされるとは思ってなかったなー」

あの恋愛には無頓着、無関心、無感動の海斗に

「そうか?立花さんの存在が明らかになった時点で行き着くところは決まってただろう」

ま、先越されるとは考えてなかったか

「でしょ?」

あ、でも

「この間思ったんだ。遥さんはさ、切なそうな目でしか海斗を見つめてなかったんだよ、でもしるふちゃんは優しい目で見るんだ、海斗のこと」

わかってるんだね、海斗がちゃんとしるふちゃんのことを想ってるって

だからどんなことがあっても自信を持っていられる

それが分かったとき、ちょっとうらやましいかも、なんて思ったことは内緒だ

「まあ、海斗は立花さん以外無理だろ」

正月に一緒にいた時間はたった数時間だったけど

笑いあう二人を見れば誰だってわかる

「……、なあ、亜紀」

人が疎らになった裏の通り

もう手を繋ぐことすら珍しくなった弘毅の隣を歩いていたら

空を見上げた弘毅に呼ばれる