「え、じゃあさ、もう一つだけわがまま言っていい?」

探るように見上げてくるしるふの瞳が素直に綺麗だと思う

「どーぞ、悔いのないように」

「ドレスさ、前に患者さんでデザイナーの人がいて。覚えてる?あの人に頼みたいんだけど」

ああ、そういえばいたな。そんなやつも

しるふの言葉を聞いて約2年前の記憶がよみがえる

事故で危なく手を切断か、という状況だったが、黒崎病院が受け入れたことと

その時執刀した海斗としるふの健闘の甲斐あってリハビリ後は以前と変わらない生活を送れるようになったデザイナーの人がいた

術後担当したしるふと仲良くなって、退院際に「もし結婚式するときにドレスデザインしてほしかったら電話して」と名刺を渡していた

デザイナーにとって、というかその人にとって手は命、らしく

その手を守った医者だから特別よー、ということらしい

「どうぞ。連絡取ってればいい」

「うん!!」

満面の笑みで頷くしるふに優しい笑みを宿す

こうやって隣で微笑んでいてくれるなら、きっとどんなことだって耐えられる

「式場も予約取れるならとってれば。帰ってからとかやってると式あげてません、ってことになりかねない」

特に自分たちの場合

「そだね、なんか順番違うけど。でも由斗にい達が反対するわけないし」

「こっちも飛んで喜ぶことはあっても眉間にしわ寄せることはないだろう」