あの時も、これからも

「ちょっと野暮用がね」

腰に手を当ててにらむしるふの横を通り過ぎ、木製のテーブルにカバンと持っていた小さな紙袋を置く

「ちょっと野暮用ですって?日本から飛んできた彼女より優先させるべき野暮用って何よ」

言ってみなさいよ

「しるふってさ、」

「何よ」

「間が悪いよな。…いや、タイミングがいいのか?」

後半は独り言のようだ

「はあ?なんですって?半年ぶりに逢う彼女に向かって!せっかくご飯作ってお風呂沸かして待ってたのに!遅れて帰ってくるし、その上間が悪いってどういうことよ!!海斗!!」

あれか、半年ぶりだから帰ってきた途端に抱きしめてくれるとかそういう甘いシチュエーションを想像した私がばかだったってことか

やっぱりこいつはどこまで行っても淡泊男なのか

せっかく逢えてうれしかったのに

せっかく逢いに来たのに

変な期待するんじゃなかった

なんなのよ、とほほを膨らませるしるふに海斗の静かな声がかかる

「本当はさ、日本に帰ってからちゃんと言うつもりだったんだけど」

海斗の背しか見えないしるふには、海斗がどんな表情でそういったのかわからず、その意図も見えず、不思議そうに海斗を見つめるしかない