「じゃ、気を付けてね」

「ああ」

がやがやと人が行きかう空港

その中に二人の姿はあった

大きなキャリーバックを預けた海斗は、ゲートまで見送りに来たしるふに向き直る

しるふを残していくことに不安がないわけじゃない

しるふは誰よりも傷つきやすいし、それを隠そうとする

一年後、果たして自分は今のようにしるふに見つめてもらえるだろうか

そんな不安もある

それでも、自分で決めたこと

しるふを残して一人、海外に行く

それははたから見たら終わりを告げることなのかもしれない

でもこれは終わりじゃなくて、始まり

新たな一歩を始めるための準備

だからしるふを連れて行くわけにはいないのだ

帰る場所は、しるふがいるところと決めている

いろんな意味で落ち着くために、この一年を過ごす

そう決めたのだから