あの時も、これからも

「勘定に入れてるのは二人だけだ」

そのうちの一人は現在進行形

とはいってもあれがよく泣いていたのは最初の2年ほど

それ以降海斗も舌を巻くほど腹が据わってしまった

「嘘。絶対に嘘」

春日部の言葉に反論する気も起きず、ふと投げかけた視線

その先に

「しるふ…」

見つけたその姿に無意識に口がその名を紡ぐ

ほっそりとした長身と

ゆるく巻かれたやわらかそうなブラウンの髪

大きなキャリーケースを横に置き、受付で何かを話しているのは

間違いなくしるふだ

時々行きかう人々でその姿は途切れるけれど

その横顔は、絶対に見間違うことはない

要件が済んだのか受付から誘うとするその背

一瞬見えた笑顔に、足が動くのは次の瞬間

人をかき分け、まぎれそうになる背を追う

「あ、ちょっと!黒崎君!」

後ろで桃花の状況説明を求める声が響いたような気がした

「しるふ」

小走りに近づいたその背は、呼びかければ簡単に振り返る

向けられたのは半年ぶりの瞳

驚きをにじませる瞳が

「かいと…」

ゆっくりと名を呼ぶ