留学中だって一応本職を忘れるわけにはいかない

せっかく勉強して帰ったのに周りよりも感覚が鈍ってました、なんてことになったらいい笑いものだ

そんな冗談、笑うに笑えない

だからしっかりと日々患者とも向き合っている

その合間に講義を受け、急患が入れば処置をし、空いている時間に勉強する

そんな日々

一年間契約した部屋は睡眠というより、現実逃避のためではないかと最近思い始めている

こんなことをしているとまたしるふに

「そんなに仕事が好きなら病院に部屋作ればいいじゃない!!」と言われかねない

その時の口調が、表情が目に浮かぶようでそっと一人微笑んだのは海斗だけの秘密

懐かしくなったその言葉は、

確かしるふとの約束を急患が入ったために断ったとき放たれたもの

「お疲れ、黒崎君」

懐かしいと感じることが増えるほど、しるふとの時間が長いことを実感させて

一人いろいろな感傷に浸る

ふと天井のガラスから差し込む光に足を止めていた海斗を後ろから呼ぶのは、

4月から同じプログラムに参加している日本人、春日部桃花

名前はかわいらしいが、その実げしげしと使い物にならない男をけり倒すほどのきかなさをもつ