「速人、あんた覚えておきなさいよ」

そういって紗雪もしるふの隣に腰を下ろす

相変わらずなふたりの様子にしるふは微笑む

いつもいつもしるふ優先の紗雪と、紗雪よりもしるふをかわいがる速人

けれどそんな二人もちゃんとお互いを思いやっていることをしるふは知っている

やっぱり、そばにいられるって、いいな

ふと胸に浮かんだ想いにしるふはふと視線を伏せる



プリンとしたエビチリのエビを口に運んでいると

隣の紗雪がしるふのコップに酒を注ぎながら聞いてきた

速人が風呂に行った瞬間を待っていたかのようだ

「しるふさ、なんかあった?」

「なんで?」

「元気ないから。気が付かないとでも思った?」

あんた、私をなめるんじゃないわよ

そういって視線だけを投げかけてくる紗雪に、しるふは消えそうな笑みを浮かべる

「…この間、前に担当した女の子を助けられなかったんだ」

それだけだよ

そうつぶやくしるふの瞳は言葉とは裏腹に哀しさがにじんでいる

「海斗君とは?ちゃんと連絡取ってるの」

どこがそれだけよ、と力のないしるふを見つめながら紗雪は聞く