「折り返し地点ですからね。ここいらでいろいろリセットしないとだめですよ」

「はいはい」

そうか、もう折り返し地点か…

いや、やっとかな

最近海斗の部屋の掃除にも行ってないからそろそろいかなくちゃ

きっと埃がふわふわしてる

カルテを書き終えて医局に戻ろうと階段に向かったしるふは、出入り口のところに大学生くらいの女の子が楽しそうに歩いているのを認めてふと足を止める

その瞳が切なさをはらむのは一瞬だ

「立花先生」

頭上から名を呼ばれて階段を振り仰ぐ

「医局長」

すたすたと階段を下りてきた神宮寺の柔らかい瞳がしるふを捕える

「大丈夫?」

たった一言でそうたずねた神宮寺はすべてを了解している

しるふがまだ桜のことを引きずっていることを

なんとかバランスを保っていることを

「大丈夫です」

微笑みながらそう答えるとしるふは階段を上がっていく

その背中を見つめながらそっと神宮寺はつぶやいた

「まったく、留学なんてするからよ。黒崎先生」