自分でもわかっている

まるでぴんと張った糸のように

いつ切れてもおかしくないそれのように自分がぎりぎりで保っていることを

少しでも均衡を崩せばまっさかさまに落ちていくことを

そしてその時に手を差し伸べてくれる愛しい存在が近くにないことも

だからこそ崩れるわけにはいかないのだと自分に言い聞かせる

河木桜の対応の後

春から降り積もった消化しきれない思いが一気に膨らんでいるのを自覚する

ついでに海斗に会いたいという思いも

寂しいと思う気持ちも

秋という嫌いな季節がやってきたこともあって日々ため息が増えていく


「たっちばなせんせ。ちゃんと黒崎先生に連絡してます?」

ICUから出てカルテを書いていたら後ろからぴょんぴょんと少し跳ねるように園田夏美が近寄ってくる

「あー、最近忙しくてメールばっかりかな」

本当は声を聞いたら張り詰めた糸が切れそうで怖くて電話できないのだけれど

「えー、ダメですよう。ちゃんと電話をしないと。メールだと相手がどんな口調で言ってるかわからないでしょ?だから電話の方が変な誤解を招かなくていいと思うんです」

ま、確かに

得意げに語る園田の言葉に内心相槌を打つ