あの出会いから、彼はやたらとわたしに懐いてきた。
「今度俺学校ない日にさ、ご飯食べにいこうよ」
「……気が向いたら、行きましょう。」
満更でもないけれど、経験がないゆえに慣れない空気に馴染めない。
交際経験なし、告白された回数ゼロ。
“一般的”として平坦な道を歩んで生きると、色恋によるごたごたとは無縁だったことは高校卒業後の最近に学んだ。
「青空コンビー!そろそろ時間だよー、休憩変わってー!」
田辺さんがわたし達を呼んだ。
この「青空コンビ」という総称も、「あの出会い」から生まれ、そしてすぐに馴染んでしまった。
噂によると、会ったこともない遅番さんにもこのふざけた名が広まっているらしいので、甚だ迷惑。
田辺さんと休憩を変わり、沢田さんと店内に戻る。
店内は変わらずがらんとしていて、学校帰りの高校生数名が漫画雑誌を立ち読みしたり、並んでいるお菓子やスイーツを見ながらぶらぶらしているだけだった。
「ねぇねぇ藤堂さん。焼き肉は好き?俺美味しい店知ってんだー。ホルモンがメインの店なんだけど、マルチョウがすっごく美味くてさぁ」
結局彼は、仕事中だろうと喋り続けた。