「あの……なにか?」



声を掛けると、新人くんはハッと顔をあげ、呆けていたのが恥ずかしかったのか照れたように笑った。



「あっ、すみません初めまして、今日から入ります、沢田そらです。よろしくお願いしますっ」


「あぁ、はい。よろしくお願いします」



初っぱなから呆けるなんて、大丈夫かこの人…?

そう思っていたのを察したのか、沢田さんが焦ったように喋り出した。



「すみません、さっきはシカトしたんじゃなくて……その、えっと…」


「あ、いえ別に…」




顔をさらに赤くさせてもごもごと口ごもる。

なんだか見てるこちらまで恥ずかしくなってくるような照れようだ。



そして小声で呟いた。



「藤堂さん…と、俺の名前、合わせたら“あおぞら”だなって……、なんとなくそう思っちゃって…」






これが、彼とわたしのはじまり。



春の日に訪れた、一般的で、でもほんの少しだけ不思議な出会い。