家に戻ると、もう目を覚ましていたそらがソファに腰掛けてパソコンで動画サイトを見ていた。

帰ってきたわたしを見て、目を丸くさせた。



「あれ、今日初出勤じゃなかったっけ」



そらの顔を見ると、心の中で強張っていたものがほろほろと優しく崩れていく。



「…っそらぁ~…」



ふらふらと歩きながら彼の体に寄りかかると、彼の両腕が優しくわたしを包み込む。


そらの腕の中が、わたしが一番素直に泣ける場所だ。



「妊娠、したの…」



そらの腕の中だから、重たい事実も口ごもらずに言える。



「…まじ?」



そらの顔を見ずに頷いた。



「どうしよっ…あたし…」

「産んで、葵」




思っていたよりも早い返答に、わたしは顔をあげた。


そらが優しく微笑んで、いつものようにわたしの頭を撫でた。