あの焼き肉の日から、わたしの沢田さんに対する敬語が砕けてきた。


コンプレックスを話して気が許せるようになったのかもしれない。



あれから大体月に1度、二人で食事をするようになった。


話す内容は本の話だけではなく、職場の話であったり、今までの人生だったり、様々だ。



そうしていく内に夏が終わり、短い秋が訪れる。




「沢田さんちでもいいよ」




次の食事の約束をするとき、わたしが言った。



沢田さんは驚いた顔をしたが、笑いながら言った。



「襲っちゃうかもしれないよ?」

「わたしなんかを襲うなんて、やっすい本能だね。」



10月下旬の日曜日に約束し、わたしたちはその日が休みになるよう休み希望を出した。


水橋さんがなにかを察したのか、わたしを見てにやにやしていた。




そしてわたしは、本当に襲われても良いと思えるほど、沢田さんを好きになっていた。