「恭がわたしのこと、必要に想っているかも、って、そう――」

「オレ、正直わからない。初めはさ、日々の生活のなかに綾がいるとか、いないとか、意識してなかった」

「うん」

「友だちが泣いたことがさ、妙に心に残っていて。どんな感じなんだろうって。それをイメージできないでいたんだけれど――」


恭司の言葉を聞いて、綾は目を閉じる。

小さく息を吐いて、腕時計を見つめた。


「帰ろうか?今なら、終電間に合うし」


恭司は、驚いたように綾の顔を見つめる。

そこには微笑みながらも、何か意思を持ったような印象を与える綾の表情があった。


「――そうだね」