「えへへ」
「泣いたり、笑ったり、忙しいなぁ」
「いつも笑わせてくれるのは、恭の力ね。あっ、イタッ!」
綾が左目を抑える。
「どうしたの?」
「コンタクトずれちゃったみたい」
「コンタクト入れてんの? 大丈夫?」
「うん。ハードだからすぐずれちゃうの。慣れっこなんだけれど、いつも痛い」
苦笑いしながら、綾は目元に自分の指を持っていく。
それを見て、少し怖いものを見るように恭司が眉を顰めた。
「どうやってなおすの?」
「こうやってね、ここを人差し指で押さえて――」
綾は左目の目頭を右手の人差し指で押さえ、左手を顔の前に開いた。
顔を右に向け、左手のどこかに視線を絞り、顔をゆっくり左側に動かし始めた。
それがどこか、恭司は気付く。

