「綾の話をオレの都合のいいほうに考えると、綾はオレを必要としてたわけでしょ?」
「――」
綾は答えなかったが頷いた。
それが恭司には嬉しくて仕方なかった。
「じゃぁ、今度は良い方の話を聞きたい」
「いいほう?」
「どんなキャラクターを送ったの? 書いて見せてよ」
恭の優しげな表情を目の前にして、綾はこくんと頷いた。
バッグから、手帳とボールペンを出し、無地のページを開いて、軽やかにペンを動かしながら、優しいタッチの微笑ましい母と子のイラストを描いた。
「こんな感じのなの」
「あー、なんか、あったかいイラストだ」
「ほんと?」
「うん。きっと描く人の人柄が出るのかもね。いいよ、とっても」
「ありがとう。わたしの憧れみたいなものを描いたの。それが評価されたのはすごく嬉しかった」
恭は綾の顔に見入って、大きく息を吸い込む。
そして口角を上げるように微笑んだ。
「会ってから、いちばんの笑顔だ」

