恭&綾~【恭&綾シリーズ】1


「綾の話をオレの都合のいいほうに考えると、綾はオレを必要としてたわけでしょ?」

「――」


綾は答えなかったが頷いた。

それが恭司には嬉しくて仕方なかった。


「じゃぁ、今度は良い方の話を聞きたい」

「いいほう?」

「どんなキャラクターを送ったの? 書いて見せてよ」


恭の優しげな表情を目の前にして、綾はこくんと頷いた。

バッグから、手帳とボールペンを出し、無地のページを開いて、軽やかにペンを動かしながら、優しいタッチの微笑ましい母と子のイラストを描いた。


「こんな感じのなの」

「あー、なんか、あったかいイラストだ」

「ほんと?」

「うん。きっと描く人の人柄が出るのかもね。いいよ、とっても」

「ありがとう。わたしの憧れみたいなものを描いたの。それが評価されたのはすごく嬉しかった」


恭は綾の顔に見入って、大きく息を吸い込む。

そして口角を上げるように微笑んだ。


「会ってから、いちばんの笑顔だ」