ちっちゃいあいつの夏休み

私、藍島唯(あいじまゆい)。蘭英(らんえい)高等学校2年D組。



今日、私は自分は本当に狭いところで生きていることを知った。




世界は広い。



広い世界の中では、何が起こるかわからない。



人間が十分の一のサイズになることだってあるのだ。



「147cmが、14.7cmにねぇ…」



私の兄、3年E組の藍島修也(しゅうや)がつぶやく。



「147って私より16cm低いね」



「俺より32cm低いな」



「はいはいはい、どーせ俺はチビですよーだ」



そう拗ねるのは橋本良太(はしもとりょうた)。



本当は147cmらしいが、今は手のひらサイズ。まるで人形だ。目も黒目が大きくてくりくりだし、



黒くて短いツンツンの髪をどうにかすれば女の子でいけると思う。



「いやー、マジでチビだよな。ほっぺ触らせて〜」



「ちょっ、やめてくださいよ」



「あ、私も〜」



「やだ」



2文字で断られ、さすがにいらっとする。



「こら、ちゃんと敬語使え」



「は?なんでだよ。同い年なのに」



「大丈夫、橋本1年で通るから」



にっこり笑うとおもいっきり睨まれた。はて、なんでだろうか?