ちっちゃいあいつの夏休み

7月の4週目の月曜日、お昼の12時半ちょっと前。



私は今、家のリビングでソファーに座って文庫本を読んでいる。



平日なのに何故家に居るかというと、…ただ単に夏休みだから。



宿題やる気が起きなくて、ついつい本に手を伸ばしたら止まらなくなったのだ。



でも、『勉強しなさいッ!!』と怒る親はいない。なんでも、福引きで海外旅行のペアチケットを当



てたらしい。夏休みいっぱい帰って来ないそうだ。



…まあ、いいんだけど。静かで。



部屋には私がページをめくる音だけが響く。



もうそろそろご飯にしようかな、とソファから腰をあげると、



「ただいまぁ」



がちゃ、とドアの開く音と一緒に兄さんの声がした。良いタイミング。



「お帰り、兄さん」



そう言いながら玄関に向かう。リビングを出て、廊下へ。



……………………え?



私はその瞬間、自分の目を疑った。



…何故かって?



兄さんの右肩に



……………小人が乗っていたから。



「……何その未確認生物。」



「未確認生物言うな!!!」



真っ赤な顔で反論する、未確認生物。



……なにこいつ、かわいい。