「なっ…」

その光景に、彼女は絶句する。

ほんの数百メートル先に、街があった。

都市と言っても過言ではない、結構大規模な街。

いや、大規模などという言葉で片付けていいものか。

その街はとにかく出鱈目で雑多だった。

先程りせの頭上を通過していったワイバーンが横切るのは、高く高く成層圏にまで届く軌道エレベーター。

その足元には近代的なビルや建造物が立ち並ぶ。

軌道エレベーターの遥か向こうに見えるのは、雲を頂くほどの高さの山岳。

その麓にはジャングルと言っても差し支えないほどの広大な密林地帯。

そんな大自然が間近に広がっているというのに、街中には煌びやかなネオンが輝き、オーロラビジョンには愛らしい歌姫のPVが大音量で流れ、大きく耳の尖った美女や、髭だらけで背の低い寸胴の男といった亜人種が通りを行き交い、公園のベンチでは関節部に継ぎ目のあるロボット然とした自動人形(オート・マタ)が読書を楽しんでいる。