そんな千春の為にも。

「あの娘の素性が分からぬ限り、手心を加えてやる訳にはいかぬ」

姫羅木は非情に徹した。

獲物を捕食する為には手加減などしない野生の狐のようだ。

冬城の地や千春に危害を加える恐れのある者は、容赦なく喉笛を噛み切る。

神格化した狐霊であり、稲荷でありながらも、姫羅木はそんな残虐さを持ち合わせていた。

「さぁ答えよ娘。お前は一体何者なのじゃ?答えねば狐火がお前の身を灰塵と化すぞ」