陽輝は本をしまい、イヤホンを外した。
暫くして、バスは停車してドアが開いた。
お年寄りが降りて行き、陽輝も降りて行く。勿論、三人も。

「どっか、悪いのかな？」
「お見舞いとか？」
「こんな時間から？」
「健康診断とか？」

今は朝の10時少し前。様々な憶測が飛び交う。

陽輝が乗ったエレベーターは四階に止まった。

「四階って小学生以下の子ども用の入院施設じゃなかったけ？」
「隠し子がいるとか？」
「甥とか姪じゃないの？」
「だとしたら、こんな時間に来るか？」

陽菜と貴大は好き勝手に様々なことを言う。
一方、優那はこんなことに意味がないということを感じ始めていた。
ストーカー紛いのことをして真実を知っても、それが何になるというのだろう。

教科の教員ではなくとも、生徒からすれば司書も先生という認識であることには変わらない。それは陽輝も同じのはず。

だから【好き】という気持ちを伝えてはならない。
それが変わることはないと言うのに。