いつの間にか、斜め前に居た男が隣の席に忍び寄り、さり気無く気配を消した手を、こっそりと肩に回していた。


そしてもう片方の手は注射器が握り締められ、鋭い長い針が俺の目玉に迫っていた。


その先鋭された針は今まで見たこともないような、とてつもない狂気の光を放っていた。じっとりとした嫌な冷や汗が、頬を伝う。


「兄弟仲良くウイルスで死ね!!!!」


「うわあああああああ!!!!」


――兄貴助けて! 力をくれ……!


ウイルスキラーを思いっきり突き飛ばし、怯んだ隙を見て拳を高く振り上げた。


――俺の復讐!!!! 兄貴の無念を食らえ!!!!