「……はい。もしもし竹下ですが」


電話に出たのは弱々しい声のお袋だった。


「俺、信介だよ……あのさ、絵恋さんはどうしている?」


「信ちゃん! 貴方どこにいるのよ!? 戻って来て頂戴な! 

絵恋さんはソファーでずっと泣き崩れているの。とても痛々しくて見ていられないわ……手術は成功したのでしょう? 秋雄ちゃんは一体どこへ行ったのかしら……」


お袋は1オクターブ上げ問いただしたが、また暗く生気のないトーンに戻った。


「……知らない。俺なりに少し探してみるよ。あのさ、絵恋さんの自宅の住所を教えてくれる? 秋雄のお見舞いに来てたみたいだからさ」


「絵恋さんのお母様? ちょっと待って、電話帳にメモっておいたはず……えっと確か護国寺や御茶ノ水方面だったと思ったわ――あった、あった、言うわね? いい?」