どこをどうやって歩き、駅に引き返したのかは分らなかった。


ただ、パンダのぬいぐるみを抱いた子供の甲高い笑い声が、やけに耳にこびり付いていた。


まるで、あちらとこちらは別世界で、そちら側だけに楽しい時が流れているようだった。つい、この間までは、俺だってそちら側にいたのに……。


――病院の騒ぎはどうなっただろう。絵恋さんは家に戻っているのかな……。


一旦自宅になど戻りたくもなかった。一刻も早くこの足で、絵恋の母親が一人でいる時間帯、昼間のうちに会いたかった。


雑踏の中、携帯を取り出し自宅の番号を呼び出した。