「違うわ……あれは多分――眠らされてしまったの。飲み物に睡眠薬が入っていたみたい」


霙が焦ったように言った。両手は拳を作り、悲しく俯いた。


「危険な事態だと分かっていただろう! なんで無用心に飲むんだよ!」


唾を飛ばし、早口で捲くし立てた。


なにもかも納得できない……親友の張飛がなぜ兄貴を怨んでいたのかも、なぜ俺がターゲットなのかも


――誰も信用出来ない。


「言い辛いんだけど……絵恋さんのお母さんに、お茶の差し入れを貰ったの。そうしたら、いつの間にか眠ってしまって――」


「霙も? 私と絵恋さんもお茶を頂いたの……手術が終わった直後だったから、安心して口を付けてしまった」