時刻なんて気にならないし、分らなかった。じっと寒い廊下に蹲り、俯き祈りを捧げていた。


だが次第にその冷たさはなくなり、数人の足音、いくつかの人の気配が目の前を交差した。


顔を上げ、その姿を確認したいのにそんな気力はもう持ち合わせていなかった。


ただただ無事を願い、目頭を熱くした。


「竹下さん、竹下秋雄さんの弟さんですよね?」


揺さぶられる体に、宗教じみた思いから我に返ったように顔を上げた。


――誰だ?


「竹下秋雄さんの手術が無事に終わりましたよ。後は意識が回復されるのを待つだけです」