「信介。なにをブツブツ言っているんだ? 絵恋の支度が手間取ちゃって……悪いな」


窓ガラスをコンコンと拳骨で叩く秋雄に、頷いた。秋雄が車に乗り込むと、お洒落をした絵恋さんも続いて乗り込んだ。


黒とピンクのシルク調のワンピースだった。胸の大きなピンクのリボンが可愛らしい。


「信介さん、ごめんなさい! 今日のお昼はご馳走させてくださいね」


「綺麗な絵恋さんのためなら、お安い御用です」


絵恋を安心させるために、思いやりの笑みを浮かべた。手元はハンドルをぎゅっと握り締めている。


――ちっ。また後部座席に座ったか……。