車を走らせ、高速に入り込む。ここからだったら、お台場までそんなに時間は掛からない。平日もあってか、道も若干空いていた。


バックミラーを覗き込む。秋雄は絵恋さんの手を愛おしそうに握り締めていた。


――俺の目の前でいちゃつくんじゃねぇー!


エンストをわざと起こそうかとも考える。しかしそれでは男らしくない。華麗なるドライビングテクニックを見せてこそ男。そうだろ? 絵恋さん!


「信介、スムーズに車を走らせろよ。小型車なんだし」


――な、なんだとー! この男は俺が気を使っているというのに……! 華麗なるテクニックを前にしてまでケチをつけるとは! ――でも我慢だ。


相手は図に乗っている新婚カップルだ。ここでとやかく言うのは大人気ない。


「あ、あのう、お兄ちゃん? ここからだと早く到着するけど、ずっと温泉にいるの?」