絵恋がソファーに腰掛けるのを見届けると、秋雄は2人分のスーツケースを持ち上げ階段を上り始めた。跡をつけるように、後ろに張り付く。


――いつもこいつとは比べられて、嫌な気分ばかりを味わされてきたけど……死ぬのは許さない。考えられない!


「なんだよ信介。なにか用か? それならこのスーツケースを一つ持ってくれよ」


振り返った秋雄は、不思議そうな眼をし、絵恋さんのスーツケースを手渡した。


こいつは感謝されることは沢山あっても、怨まれるようなことしないだろう?


抱きかかえたスーツケースを秋雄の部屋に置き、口を開いた。


「なぁ、道中どうだった? なにか変わったことはなかったか?」