紅葉、ひろみさんと二人並んでいる、右斜め後ろのエアロを俺が使用することにした。張飛は少しだけ離れている状態だ。


「今日、本当に引越しできるの?」


「ああ。同じ目黒区で距離も近いし、荷物もそんなに無いから大丈夫。予約が取れたよ。今日ひろみの家に全部運ぶよ」


ひろみは嬉しそうに、ペダルを漕いだ。笑みが自然と零れている。


「瑠璃さん……良く別れてくれたね。作戦が効いたのかな」


「ああでもしないと、別れてくれなかったからなぁ。不知火は喜んで引き受けてくれたけど、執着や依存が半端ない女だから、後々苦労するかもな――椿さんには悪いことをしちゃったな」


「ひどーい! 私は? 後から聞かされるまで、貴方のことをどうしたらいいのか……本気で悩んだのよ?」