その視線に背を向け、洗顔をする。水の冷たさを感じながら、思い描くのは昨日の光景だった。


タオルで乱暴に拭き、鏡の隣に有るグラスに入った青い歯ブラシを手に取る。寄り添っていた秋雄の歯ブラシは消えていた。


「倒れていた時、俺一人だった?」


「ええ。救急車を呼ぼうとしたけど、お酒臭かったし結婚式だしね、様子見ようと連れて帰って来たのよ。犬飼さんが背負ってくれたのよ? 後でお礼を言いなさい」


「ふぅーん」


口を濯ぎ、水を吐き出した。


――あのシスターが、へまをするはず無いもんな。