時刻は9時頃。竹下家は慌しい朝を迎えた。


「お袋。このスーツは決まっているかなぁ? 髪型は変じゃない? 後ろとか寝癖がついていないかな?」


「もう何度も言っているじゃない。大丈夫よ、素敵よ? シックな紫色のネクタイが良く似合ってるわ、信ちゃん。

貴方も用意は出来たの? ずっと鏡の前で、なにをしているのよ?

小腹が空くとあれだから、テーブルにオニギリと焼きたらこがありますからね! お茶もありますよ! ……まったく我が家は男の方が準備が遅いんだから」


「よし! これでバッチリだな。頂きまーす! 秋雄は随分早くに出かけたんだな」


「それはそうよ。絵恋さんを迎えに行って色々準備もあるんでしょう。タダ同然で挙げてくれる神父さんに、お礼を言わなくっちゃ……

あ、貴方! 家の豚肉でも差し入れしましょうか? 園の子供達がきっと喜ぶわよね?」