「睦美さん。なにはともあれ無事で良かったよ……今度は幸せになってね。

もう会わないと思うけど、この果てしない空に祈ってるよ。暗闇があれば光もあるんだ。頑張って――」


玄関前でそっと呟いた。すると


――ありがとう


そう答えが返って来たように思えた。


気のせいだ。風に揺れる葉っぱの囁きだよな。


おっと、遠くからサイレンが聞こえるぜ。早く行かなくっちゃ!


駅へ慌てて走ったが、頭の中は重蔵、睦美、愛人――関羽。それぞれの人物の表情がころころと渦巻いた。


これから俺は何人の復讐を見届けるんだろうか――。