「いいか村山ぁ? 理不尽な言い掛かりで首にした事を後悔させてやるからな。 

飼い犬に手を噛まれたというなら、手だけではなく、咽元も噛み千切り、八つ裂きにしてやるからな! 

嫌なら給料は、ちゃぁーんと振り込んどけよ? 分かったな、じゃあな!」


店内は、あらゆるの音が一時停止したかのように動きが止まる。


口をおっぴろげ、ポカーンとしている客や、村山の驚愕の表情が堪らなく良い気味だった。


自動ドアが開閉し、最後に振り返りガラス戸を蹴った。もうここには来ないという、自分なりの最後の合図だった。


――くそっ! 阿婆擦れのせいで予想外だ。ローンは、どうするかな……返品きくかな?


まずは指輪でも取り返しに行くか――行きたくはない店だが、背に腹はかえられない。