高校二年生の夏休みが終わった。


始業式が始まった途端この大雨だ。




ザーザーと降りしきる雨が、体育館の屋上に当たって、校長先生の話をところどころ遮っていく。


久しぶりの登校日に似合わない大雨だ。



横の方からこそこそと笑い声が聞こえる。


会話を小耳に挟むと、

どうやら声が雨のせいで全く通らないのに、

普通にしゃべり続ける校長先生が面白かったみたいだ。


なるほど、そう考えると、確かに面白いかも。


でもそれよりも私は、校長先生の脇と胸あたりにできた汗のシミが気になるんだけどね、、


ここまで離れているのに見えるということは、かなりの量だな、、

とかぼーとしながら、そういった変なことを考えていると、

突然名前を呼ばれた気がした。


周りを見てみると、斜め後ろにいる彼と目があった。


呼んだ?って聞きたいけど、

もしそれが気のせいだった場合、
「うわ、自意識過剰ー」
ってひたすらいじられる場面が容易に想像できてしまったから、


なにも言わずにただ彼に向かって少し首を傾げた。


すると、そいつは軽く体を前のめりにして、

笑顔を浮かべて口を開いた。


「依真も夏のコンクール出したんだろ?」


「うん」


もってなに、

すこし眉をひそめて彼を見る。


「じゃあこれいつものパターン、俺の勝ちだね。」


え、なにこいつとてもはらたつ。


何か言い返そうとしたと同時に

急に拍手の音が鳴り響く。


「依真ちゃん、いま呼ばれたよ!」

前に座ってた女の子が拍手しながら私に大きい声でそう言ってきた。


やっぱり依真という名前ややこしくていやだな、「いま」が続いたから、なんとなくだけど、後ろのあいつがぷっと笑った気がする。



「絵で準優勝だってね!すごいね、はやく前に行かなきゃ」

とその子に急かされて立ち上がる。






悪い予感はしていた。準優勝だもんね。








「同じく全日本学生油絵コンクール、最優秀賞樫野 颯太[かしの そうた]以下同文、おめでとう」




壇下から、


また雨の音をかき消すような拍手の音が湧き上がる、中には口笛の音も。




わたしは


下を向いて、


自分の手をぎゅっと握りしめた。









またまけた…