「義兄さん。」
「優夜か、やっと来たのか。」
学園の理事長室に居た男、私の義兄だ。
『嵯峨壱夜』
この学園の学園町を勤める男。
優しそうにしているが結構腹黒い。
「あの人と義父から再三メールやら電話やら、手紙やら来てたからね。」
「手紙か、・・あの人達らしいといえばそうなんだけど・・・まさかそこまでとはね。」
「なにがお食事会なんだか、自分が裕福に暮らせる事ばかり考えてるくせに。」
「こらこら、本当のことでも言わないの。一応は優夜のお父さんとお母さんなんだからね。」
「はいはーい。」
適当に返事をして理事長室の真ん中に置いてある柔らかなソファに身体を置いた。
足を組むと、女の子なんだから恥じらいを持ちなさいと義兄に言われた。
今更私に恥じらいを持てという方が可笑しい気がする。
不意に、コンコンとドアをノックする音が聞こえて、その後一人の男性が部屋に入ってきた。
「壱夜さん、今いいですか?」
あ、と思わず声を漏らしそうになってしまった。
『白川帝』
この学園の風紀委員長、二年。
普通なら3年で就任する風紀委員長を特例で二年で就任した。
俺様だが普段は物分りのいい紳士を演じている猫。
「優夜、来てたのか。」
「帝、あんたまだこの学園にいたの?」
「いちゃ悪いのかよ」
「そうは言ってないよ、ただ・・」
「ただ?」
「あんなに義兄に反発してたのに壱夜さん、なんて言っちゃって・・・。ねぇ義兄さん、どうやってこの男手懐けたの?」
そう問うと、義兄はなにも答えてはくれず、ただ涼しい顔して微笑むだけだった。
そしてそのまま帝と義兄は学園運営とやらの難しいはなし(?)に入ってしまったので、私は面白くなく、そのまま理事長室を出た。
