父の酒で赤らんだ顔が、鬼のように変わり、私を酒瓶でぶん殴る。
私の叫びは、父に届かず、何度も折檻された。
 徐々に心仮名にも感じなくなり、痛みも消えていった。キーンと耳鳴りが、頭の中をかき乱し、私は天井を見上げた。
 蛍光灯の頼りない光が、ぼんやりと漂い、小さなハエが悠々と飛んでいった。
私は、あのハエよりも惨めだった。自由や愛を求めることが許されていなかった。
(あのハエのように、自由に飛んで生きたい)
どんなに疎まれたって、けなされたっていい。ただただ、底の見えない闇より、自由な光の世界に生きたい。
 ハエは網戸の隙間から、ブーンと外の世界に飛んでいった。