私は彼に愛されているらしい2

「今日はともかく今までの全員が全員そうでも無かっただろ?」

「でも…半々かな。堅苦しいイメージを払拭したくて女子力磨いてるんだけど、技術者だらけの職場じゃちょっと浮いてる気もするしね。」

職場のいつもの様子を思い浮かべて有紗は眉を上げた。それは俯きじゃなく、愛しいものを思い浮かべる照れ隠しにも似ている。

「でも楽しいんだろ?」

大輔の読みは当たっていた。堪えきれず笑みがこぼれると有紗は強張っていた体を開放するように大きく息を吸って肩の力を抜く。

「まあね。職場恋愛すればいいじゃないってよく言われるけど、それはちょっと御免だしな。でも同じ仕事をしている者同士波長はすごく合うんだけどね。」

「だろうな。」

「みちるさんも舞さんも職場恋愛だしね。ま、理系女は文系男子を相手にするとちょっと疲れるって話。仕事柄もね。」

何度か有紗の恋愛話を聞いてきた大輔は小さく何度か頷いた。

馬鹿なふりをすることは出来ないから少し抜けているふりをしたり、間違いに気付いても指摘しないで聖母のごとく見守るキャラを作ってみたり、何にでも好奇心旺盛な幼いキャラを演じたこともあったのを知っている。

保って3か月。

それはキャラ崩壊もあれば、我慢の限界もあるし、有紗の残業三昧な生活が原因なこともあった。

おかげで就職してから長く続いたためしがないのだ。

「ま、いいや。終わった話だし。」

「どんな奴でも話が合う相手じゃないとそれなりに苦労するよ。まあ、自分のほうが優位に立っていたい男が多いって点ではやたら賢い女は苦労するかもな。強く思われる。」

「そう、それ!性格も手伝ってなかなか万人受けしそうな守ってあげたい女の子になれないのよね。」

少し前の出来事を思い出して有紗はこめかみ辺りに手を添えた。

うっかり君塚に話してしまったが為に笑い話のネタにされたが、有紗には有紗なりの思いがあって計画したか弱い女の子作戦だったのだ。