ふわりと懐かしい思い出に包まれて有紗の表情が和らいだ。それに少し安心したのか大輔の顔も優しく微笑む。
「大学生活も最初の方は楽しかったな。皆でバカ騒ぎして徹夜して…でも就活が始まってから何か変わっちゃった気がする。女の子同士でさ…よく弱音吐きあってた。」
「弱音?」
「先輩に言われたように大手から受けていったんだけど、やっぱり興味のある中小企業にもエントリーしててさ。書類審査通って、筆記も通って、いざ面接となると言われちゃうのよね。それだけの学歴がある人が何故うちの会社なんか来たいと思うんですかって。」
「は?」
初耳だった大輔は眉を寄せて目を細め、その言葉の続きを求めた。
「最初は意味分からなくてただの圧迫か…単なる興味かと思ってたんだけど、どうも違うってことを知っちゃってさ。…自分より高学歴の女性社員をとりたくない男たちが嫌がるんだって。…扱いにくいみたい。」
周りも言っていた、ろくに人間性を見てもらえずに冷やかしかという目で見られたと。
おそらく企業としてはどうせ滑り止めか場数を踏む為のエントリーだろうと思っていたのだろう。ただ興味があったという動機なだけではそう思われても仕方ないと諦めるしかなかった。
でも悔しいし空しい。
「合コンだってそう。学生の時は何にも気にしなかったのに就職して企業のランクや給料とか学歴とか他人と比較する材料が増えるとすごく構えてかかるの。…自分より頭がいいとか、自分より給料がいいとか、すぐ嫌な目で見られちゃうのよね。俺なんかより~って言葉にされるときもあれば態度や雰囲気で出される時も多いかな。」
「男の見栄ってのもあるからな。」
「分かるけどね。でもさ、よく知りもしないで別世界の人だなんて言ってほしくないのよ。…今日も高卒だって勝手に思い込んでいた奴が実は国立大の工学部出身だって分かった瞬間の引き方ね?ごめんなさいって謝るつもりもなく何でこんなとこにいるのって顔とか…正直きつい。」
そう、あの時抱いた疎外感はかなり大きかった。
ヤバイ。そんな顔をしていたのは分かる、でも誰一人として申し訳ない思いを含んでいなかったことにも気付いてしまったから具合が悪かった。
多勢に無勢か、あのままだと千春が全員に謝罪を要求しそうな気がして有紗は場を離れたのだ。
嫌な雰囲気だけを残したのは有紗のせめてもの仕返しだった。
「大学生活も最初の方は楽しかったな。皆でバカ騒ぎして徹夜して…でも就活が始まってから何か変わっちゃった気がする。女の子同士でさ…よく弱音吐きあってた。」
「弱音?」
「先輩に言われたように大手から受けていったんだけど、やっぱり興味のある中小企業にもエントリーしててさ。書類審査通って、筆記も通って、いざ面接となると言われちゃうのよね。それだけの学歴がある人が何故うちの会社なんか来たいと思うんですかって。」
「は?」
初耳だった大輔は眉を寄せて目を細め、その言葉の続きを求めた。
「最初は意味分からなくてただの圧迫か…単なる興味かと思ってたんだけど、どうも違うってことを知っちゃってさ。…自分より高学歴の女性社員をとりたくない男たちが嫌がるんだって。…扱いにくいみたい。」
周りも言っていた、ろくに人間性を見てもらえずに冷やかしかという目で見られたと。
おそらく企業としてはどうせ滑り止めか場数を踏む為のエントリーだろうと思っていたのだろう。ただ興味があったという動機なだけではそう思われても仕方ないと諦めるしかなかった。
でも悔しいし空しい。
「合コンだってそう。学生の時は何にも気にしなかったのに就職して企業のランクや給料とか学歴とか他人と比較する材料が増えるとすごく構えてかかるの。…自分より頭がいいとか、自分より給料がいいとか、すぐ嫌な目で見られちゃうのよね。俺なんかより~って言葉にされるときもあれば態度や雰囲気で出される時も多いかな。」
「男の見栄ってのもあるからな。」
「分かるけどね。でもさ、よく知りもしないで別世界の人だなんて言ってほしくないのよ。…今日も高卒だって勝手に思い込んでいた奴が実は国立大の工学部出身だって分かった瞬間の引き方ね?ごめんなさいって謝るつもりもなく何でこんなとこにいるのって顔とか…正直きつい。」
そう、あの時抱いた疎外感はかなり大きかった。
ヤバイ。そんな顔をしていたのは分かる、でも誰一人として申し訳ない思いを含んでいなかったことにも気付いてしまったから具合が悪かった。
多勢に無勢か、あのままだと千春が全員に謝罪を要求しそうな気がして有紗は場を離れたのだ。
嫌な雰囲気だけを残したのは有紗のせめてもの仕返しだった。



