私は彼に愛されているらしい2

「結婚すんの?」

顔も視線もフロントガラスに向いたまま、まるで口の中だけで呟いたような声に有紗は後ろめたさえ感じてしまう。

しかしそれも僅かな時間。

おおよそ数秒の間に全てを飲み込んで有紗はゆっくりと口を開いた。

「はい。」

「いつ?」

「まだ分かりません。」

「もっちー。」

「はい。」

沢渡の手がステアリングから離れ頭がヘッドレストにもたれていく。

「…なんで俺じゃなかったのかな。」

両眼を覆うように右手をかぶせた沢渡の表情は分かりにくかった。

口元は笑っている、でもそれは容易く嘘をつける部分だ。

本心を見極める目はいま彼が悟られないようにと包み隠してしまっている。

沢渡の言葉の意味は有紗に理解できるのか分からなかったが、自分自身が感じた問いに素直に答えなければいけない気がした。

「好きな人がいるんです。」

「…なんで選ばれなかった?」

また、言葉につまってしまった。

沢渡でなく大輔を選んだ理由、それを深く強く言葉にして考えたことはあったのだろうか。

一度は大きく揺れた心は今では穏やかに大輔を見つめている。