私は彼に愛されているらしい2

つまりは沢渡が故意に道を変えていることは明白だった。

下手に動くのが躊躇われて視線だけで外の景色やカーナビで現在地を把握していく。

どんどん大通りから離れて抜け道に近い車通りの無い方へと進んでいった。

「俺がいい人だって…油断してない?」

怒りにも似た沢渡の声に有紗の表情も強張り始める。

外は街灯も少ない、沢渡の表情を照らす灯りは対向車しかなかったがそれもまばらだった。

暗い車内では沢渡の表情も真意も読めない。

信じていいのか、そうでないのか、判断は自分自身の感覚に委ねるしかないのだ。

「自分から車に乗ったってことは、同意ってことだから。」

丘の上に繋がる車通りの少ない場所で沢渡はゆっくりと車を停めた。

サイドブレーキの上がる音は嫌に大きく車内に響き耳の奥にまでその名残が落ちる。

空調の為か辛うじてかかったままのエンジンに安心するも状況はあまり喜ばしくなかった。

シートベルトを外した沢渡が体を起こして有紗に向き合うがそれにすぐ様反応する訳にはいかない。

覚悟を決めた有紗は首から上だけを動かして沢渡を迎え撃った。

睨むわけではない、冗談かとかわすつもりもない、怯えるわけでも無い、ただ沢渡と向き合ったのだ。

見極める為に。

「…何も言わないね。」

試すように、どこか探るような言葉にも有紗は口を開かなかった。

僅かに沢渡との距離が縮まった、その瞬間に無意識に体が反応して有紗の左手が逃げてきていた右手を握る。

その様子は沢渡も気付いたようで、有紗の手元に目をやると眉を寄せて口元に力を入れた。