私は彼に愛されているらしい2

完全に2人の力関係は分かり、有紗は攻撃の対象を定めた。

西島、彼女を見つめているといくつかの忘れてしまった記憶が戻ってくる。

やたらと有紗を合コンにさそったり、部署内を独身男性を紹介しろと言ってきた同期がいた。

彼女は西島に気に入られよく行動を共にしていたような気がする。

有紗が東芝の下につくようになれば西島は親切を装うようにして何かと絡んできたことも思い出した。

有紗が同期の女子の中で孤立しかけたとき、優しく手を差し伸べてきたのは誰だったろうか。

「先輩方は何をしに会社にきてるんでしょうかね。」

「何ですって?」

「仕事?それとも婚活?あ、もしかして自分中心の集団作りですか?」

「はあ?ちょっと失礼にも程があるんじゃない?」

さすがに押されてばかりではいない西島がやり返そうと顔を上げて有紗に向き直した。

「駄目ですよ。自分中心の集団を作る人は1人の人に絞れなくなります。最高に心地いい場所を自分で作ってしまったんじゃ…それ以上の男はなかなか現れませんよ。イケメンと高給取りなんて制限がつけば尚更ね。」

見事に言い当てられた西島は眉間にシワを寄せてマスカラを握りしめる。

「せっかく取り込んだ後輩はどんどん結婚していくのにどうして自分だけなんて何度も考えたんだろうなあ。ねえ、先輩?」

目を泳がせていた秋吉は少しずつ表情を変えて忙しなく有紗と西島の間に視線をさまよわせた。

どうしようか焦る秋吉はもはや有紗の視界にあって無いようなものだ。

西島の手の中で軋む音をたてるマスカラが彼女の心の乱れを表していた。

「だから結婚出来ないんですよ。」

「なっ…!」

「ちっさい女。」