私は彼に愛されているらしい2

今日はその小技を使わなくてもお互いにいい調子で話が進めたので本当に気分が良かったのだ。

本館に戻り、ふと思い立っていつもと違う階のお手洗いに寄ることにした。

たまには違う自販機で飲み物を買おうと思ったからこそ出た行動だったのだが、それが幸か不幸か1つの出来事を巡り合わせる。

東芝にも差し入れを持っていこうと思いついたのも偶然だった。

おもしろいもので階が変われば部署も変わって広い廊下を漂う空気もかなり違うように感じる。

有紗は新鮮な気持ちを味わいながら目的地であるお手洗いを目指した。あと少しで入り口に入る、しかしそこで陰口を話す声が聞こえてきたので足を止めた。

「マジでムカついて。」

正確に言えば声が聞こえる前に何かを感じて体が勝手に反応していたのだ。

自分だと言う確証はなかったのに、何故か自身のことであると気付いてしまうのは第六感が働いたからなのだろうか。

小さくため息を吐いて壁に背中を預け、どうしようかと一応の思案をしてみた。

まだ自分と決まった訳じゃない、でもどういう訳か自分のことだという自信がある。予想通りその会話は有紗の陰口だったようだ。

「設計士だからっていうプライド?一般事務とは違うんだっていう線引きが凄いのよね。」

「何しに会社へ来てるんですか、だっけ。あの子の名言。」

「あれで持田は女子の大半を敵に回したのよ。」

そんな苗字は珍しくもないし、設計士という縛りをつけたところで1人に絞られる訳ではないと思う。

しかし有紗が自分の事だと確信付ける理由はその声の主たちにあった。

「西島さんにそんなこと言える子はいないけどねえ。」

「私じゃないわよ。確か同期の子に言ったんでしょ?でも間接的に言われたようなもん。前々から設計士だってこと鼻にかけてるとは思ってたけど今回ばかりは痛すぎだわ。さすがの吉澤も顔引きつってたじゃない。」