私は彼に愛されているらしい2

日付は確認しているが曜日感覚が全くないまま迎えた金曜日、相変わらず仕事を抱えた状態の有紗は一心に仕事と向き合っていた。

家に帰るのは終電ギリギリ、夜が遅いため体力の低下も感じられ栄養ドリンクをかきこんで通常時間の出社をしていく毎日だ。ここで疲れを見せたらまた周りの男たちに何を言われるか分からない。

いや周りというには少し言葉が足りなかった。

有紗の人となりをそれなりに知って仲間意識を抱いてくれる人たちはそんなくだらないことは言わないだろう、少なくとも有紗はそう信じている。同じフロアの他部署の人間がそういうことを言うのだ。

実際に顔しか知らない程度の男たちが名前を聞いても分からない他部署の女性の話をしているのを聞いたことがあった。服装がどうだ、化粧がどうだ、疲れがとれていないのはもう若くないからだなどと好き勝手に言っては笑っている。

一概に男性全員と決めつけるのはよくないが、それでも警戒すべき相手であるということはその時いやというほど思い知った。なぜならあとあと知ったその女性は特別顔がいいわけでもないし、目立っていい話も悪い話も聞かない、いわゆる平凡な人だったから。

つまり自分は大いにその対象になりうると有紗は判断したのだ。

冗談じゃない。そんな目で見られてたまるか。

絶対に疲れの色を濃く出さない、常に同じ状態を保とうと気合を入れた。

「おはようございます。」

今日もいつものように適度な愛想で一日を始める。ここを乗り越えれば土日の休みが待っているととりあえずの休息地点を目指して走るだけだった。

仕事仕事仕事、集中しすぎて有紗は意識せずとも大輔との出来事をすっかり忘れている。

しかし爆弾というのはいきなり投下されるからこその破壊力と衝撃力なのだ。

“明日の夜、空いてる?”

大輔からのメールが来たのは金曜の夕方だった。

「げっ。」

トイレで一息ついていたところに来たメールを見て有紗は遠慮なしに嫌な顔をした。

「忘れてた。」

仕事だ仕事、キャリアだキャリア。このスローガン通りに過ごしてきた一週間はろくに携帯も触らなかったから意識することも無い。

鳴ったら取る、自分からは触らないという何とも年頃の女性らしくない日常だろうか。